いよいよ始まるインボイス制度|免税事業者の大家さん、不動産会社の対応をまるっと解説
~~不動産賃貸業経営の大家さんや、仕入業の不動産業者にも影響の大きいインボイス制度。2023年10月からの導入に向けて、免税事業者の大家さん、仕入先が免税事業者の場合の不動産業者の対応を解説しています。
導入後は段階的に施行されていくとはいえ、適切な知識を身につけることが必要になります。~~
2023年10月より消費税の仕入税額控除に関する「インボイス制度」が導入されます。
インボイス制度自体は、平成28年の税制改正で決定され、平成15年の政府税制調査会のまとめた仕入税額控除についての報告が背景にあるとされています。
インボイス制度について広がりを見せたのは、2021年に入ってからでしょうか。
課税業者の取引相手がフリーランスや免税事業者であっても、現行の仕入税額控除が適用されたため、消費税の納税額が控除されてきましたが、インボイス制度が開始されると一部特例対象以外は仕入税額控除が適用できない状態になります。
しかも、インボイス制度は賃貸業の大家さんや、仕入れ事業を行なっている不動産会社にも影響を与えるため、適切な知識を身につけ、インボイス制度に登録するか否か、仕入業者は取引相手が免税事業者の場合の判断していく必要があります。
本記事では、インボイス制度の概要から対策方法を解説し、分かりやすい言葉でお伝えしていきます。
大家さんや免税事業者の方は最後まで読むことをおすすめします。
インボイス制度をもっとわかりやすく説明
インボイス制度がそもそも検討された背景には、冒頭で触れた平成15年度の政府税制調査会の報告内容が発端となっています。
現在の消費税は10%と軽減税率の8%と2つの消費税が混在しており、消費税が正しく課税されていることを明確に確認するために「適格請求書方式」(インボイス制度)が採用されました。
インボイス制度導入後は、上記のような仕入税額控除の適用を受けるためには適格請求書が必要になります。
もし、取引先がインボイス登録をせず現行の免税事業者の状態であれば、適格請求書が発行できず、課税業者は仕入税額控除を受けることができない可能性があります。
仕入税額控除とは?
課税業者は消費税を納税する義務が発生します。仕入税額控除とは、売上にかかる消費税と仕入にかかる消費税を差し引いて納税する控除になります。
例えば、
● 売上 50,000円(消費税:5,000円)
● 仕入 30,000円(消費税:3,000円)
上記の場合、消費税納税額は「5,000円―3,000円」で差し引き2,000円を納税することになります。
売上と仕入のある取引は、上記のような仕入税額控除が適用されるため、二重で支払うことが起きないように作られた仕組みになります。
不動産関係でのインボイス制度の影響
インボイス制度の概要がある程度理解できたところで、不動産に関連する説明を続けましょう。
主に不動産収入のある大家さんや、土地や建物の仕入をしている不動産会社に影響が出ると言われています。
例えば、貸店舗や貸事務所を賃貸している大家さんや、太陽光パネルを設置している方は、今回のインボイス制度に対して対応を検討しておく必要性があります。
そもそも消費税の課税業者は、年間の売上が1000万円以上という条件が設定されています。
大家さんの中には、年間売上が1000万円に満たない方もいることでしょう。
私は1000万円未満なので無関係の話と思うと、思わぬ落とし穴があるので注意が必要です。
「自分は対応するべきなのか」と分からない大家さんに向けて、インボイス制度の対応策を検討しやすいよう、表でまとめてみました。
|
課税売上の有無 |
オーナー |
借主 |
インボイス対応の有無 |
|
なし |
|
|
不要 |
|
あり |
免税事業者 |
免税事業者 |
不要 |
|
課税業者 |
対応を検討する |
||
|
あり |
課税業者 |
|
適格請求書を発行 |
住居の家賃は消費税が非課税のため、対策を講じる必要性はありません。
また、店舗や貸事務所を貸しているオーナーが免税事業者でも、借主も免税事業者であれば消費税の納税義務は発生しないため、インボイス対策は不要と考えてよいでしょう。
しかし、賃貸オーナーは複数の物件を所有しているケースも多く、今後事務所や店舗が空いた場合、インボイスに登録していないことが足枷となる可能性は否定できません。
では、オーナーが免税事業者で借主が課税業者の場合の対応策を解説しましょう。
要対策を検討|「オーナーが免税事業者で借主が課税業者の場合」
オーナーが免税事業者、借主が課税業者の場合、インボイスの対応策を講じる必要があり、オーナーは3つの方法から選択しなければいけません。
①オーナーが課税業者になり(インボイスに登録する)適格請求書を発行
②免税事業者を保ち、事務所賃料の消費税分を値引きする
③借主側の状況を見ながら判断する
オーナーが課税業者になり適格請求書を発行
課税業者の借主から適格請求書発行の要求も考慮すると、オーナーが課税業者になりインボイスに登録する方法が最も無難な対応策になります。
メリットとしては、借主にそのまま借りてもらえることや、他の店舗や事務所に空室がある場合も借主側の間口を狭める必要がないということです。
しかし、デメリットも念頭に置かなければいけません。
インボイスに登録することで、今まで免税事業者だったオーナーが課税業者になるため、消費税の納税義務が発生し、場合によっては手元に残る手取り額が減額する可能性もあります。
また、経理的な部分に関しても煩雑になることが予測されるため、デメリットをどのようにカバーするのかを検討した上でインボイスの登録を決める必要性があるでしょう。
インボイス登録方法
インボイス制度実施が2023年10月1日からとなり、開始に間に合うよう手続きを進めたいのであれば、2023年3月31日までに登録を済ませておかなければいけません。
インボイスの登録はそこまで難しいものではなく、インターネット上や郵送でのやりとりもできるため、登録することが決まっているのであれば早めに完結しておきましょう。
①国税庁のホームページよりインボイス制度申請書をダウンロードする
②申請書を国税庁へ提出する
③取引先へ登録番号、交付、受領方法を通知する
免税事業者を保ち、事務所賃料の消費税分を値引きする
インボイスに登録し課税業者になると、当然オーナーも消費税の納税義務が発生します。借主の課税業者数によっては、消費税の支払いが発生することにおいて負担になる可能性もあるでしょう。
よって、慎重に検討することも必要です。
その場合、借主側が仕入税額控除の適用が不可となり、消費税の負担額が増える可能性があるため、賃料の減額対応が必要になってきます。
もし借主側の賃料減額をオーナーが拒否した場合、借主は退去することも予測できます。
大型案件である貸事務所や貸店舗は、住居とは違い中々次の入居者が決まらないと考えられています。
その上、オーナーが免税事業者の場合、課税業者の借り手がつきづらくなることも想定しなければいけません。
とはいえ、インボイス制度は開始時に一気に変わる訳ではなく、段階的にとも言われているため、様々なことを踏まえインボイスの登録をするタイミングを検討するべきでしょう。
借主側の状況を見ながら判断する
10月に間に合うようにインボイスを登録した方は2023年3月末までの期日が決められていますが、インボイス登録自体は3月末以降も引き続き継続しています。
借主側の意向や相談がない状態ならば、勇み足で登録を急ぐ必要はありません。
全ての課税業者の負担が大きくなるとは言い切れないため、借主の状況を都度把握しながら、必要の際にインボイス登録や賃料減額を検討してもいいかもしれません。
消費税の計算方法
次にオーナーが課税業者としてインボイスに登録すると、オーナー自身も消費税を納税する義務が発生するため、消費税の納税額を計算しなければいけません。
消費税納税額の計算方式は次の2種類からなりますが、2期前の課税売上が5000万円未満の場合は簡易課税方式での算出方法を選択できます。
- 原則課税方式
- 簡易課税方式
|
原則課税方式 |
売上にかかった消費税―仕入にかかった消費税 |
|
簡易課税方式 |
売上にかかった消費税―(みなし仕入率×仕入にかかった消費税) |
※不動産の場合のみなし仕入率は40%になります。
簡易課税方式は一定割合を乗じて算出するため、設備などの大きな備品に投資し、消費税の支払いが大きい場合でも、受け取った消費税に一定割合を乗じるため還付は受けられません。
不動産に置き換えると、大規模修繕などを予定している場合は、原則課税方式の方が有利に働く可能性があるということです。
宅建業者が仕入れをする場合
現行の制度では、宅建業者が建物を仕入れリフォームなどの手を加えて賃貸目的で貸し出す場合でも、仕入税額控除の対象ですが、インボイス制度では取引相手が個人や免税事業者の場合で上記の目的での仕入れでは仕入税額控除が適用外となる可能性があります。
今後免税事業者との取引において消費税の仕入税額控除が段階的に廃止される見込みです。
|
期間 |
仕入税額控除の割合 |
|
2023年10月1日〜2026年9月30日まで |
80% |
|
2026年10月1日〜2029年9月30日まで |
50% |
|
2029年10月1日以降 |
0% |
まとめ
インボイス制度の開始によって大きな取引である不動産取引においても影響が出ることが分かりました。
しかし、日々の業務の中でも、移動手段にタクシーを利用しなければならない場合や、急な事務用品が不足し、近くの個人文具店で購入しなければいけない場合もあるでしょう。
さらに、ホームページ制作や管理などを外部委託している場合もフリーランスや個人事業主と取引しているケースさえあり、不動産業務以外にも免税事業者との取引は多岐に渡ります。
個人の大家さんを含め、段階的に仕入税額控除が廃止の動き含め免税事業者の状態を保ち続けるのか、それともインボイス登録し課税業者になることを選択するかは、経理上の問題もあるため、なかなか個人で決められるものではありません。
ベルスタート株式会社では専門分野である税理士の先生と提携しているため、インボイス
制度も含め随時ご相談をお受けしております。
既に様々な動きが出ているインボイス制度、早めに相談してみてはいかがでしょうか。
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